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岡山地方裁判所倉敷支部 昭和55年(ワ)165号 判決 1981年4月30日

原告

宮長弘泰

ほか一名

被告

田淵征子

主文

一  被告は原告らそれぞれに対し、各金五一四万九、五三五円と、内金四七四万九、五三五円に対する昭和五五年五月四日から、内金四〇万円に対する本判決確定の日から各支払ずみまで、年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らのその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は被告の負担とする。

四  この判決は、原告勝訴の部分にかぎり、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は原告らそれぞれに対し、各金六二四万九、五三五円と、これに対する昭和五五年五月四日から支払ずみまで、年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告らの請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  交通事故の発生

昭和五五年五月二日午後四時ころ、訴外田淵寛一は、普通乗用自動車(登録番号岡五六ね七四六一)を運転して、約七〇キロメートル毎時の速度で倉敷市連島町元割交差点にさしかかつた際、わき見運転をしていたため、同車の進行方向の信号が赤であり、原告らの長男である訴外亡宮長孝浩(昭和四六年一二月二二日生)が同交差点内の横断歩道上を青信号に従つて横断歩行中であるのに気づかず、そのまま交差点内に進入して、同車を右孝浩に衝突させ、同月四日同人を死亡するにいたらせた。

2  被告の責任

被告は加害車両を所有し、自己のため運行の用に供していたもので、自動車損害賠償保障法第三条により、原告らに生じた損害を賠償する義務がある。

3  原告らの損害

(一) 孝浩の損害と相続

(1) 逸失利益 一、七六〇万四、三五八円

孝浩は死亡時、小学校三年生(八歳)の健康な男子であつた。労働可能年数は一八歳から六七歳までの四九年間、算定基礎収入は昭和五四年賃金センサス中の男子全労働者・産業計・企業規模計・学歴計の表による平均給与額(年額三一五万六、六〇〇円)、生活費は右収入の五割、中間利息はライプニツツ式により控除。

(2) 慰藉料 一、二〇〇万円

(3) 原告らは孝浩の親であり、(一)、(二)の損害賠償請求権を二分の一ずつ相続した。

(二) 損害の填補

原告らは、本件交通事故に基づく損害につき、自賠責保険金一、八一〇万五、二八八円を受領したので、原告らは、(一)の損害から、各金九〇五万二、六四四円ずつを差引く。

(三) 弁護士費用

原告らは金一〇〇万円の支払を約した。

4  よつて、被告が原告らそれぞれに対し、前項の金額の合計金一、二四九万九、〇七〇円の二分の一ずつと、これに対する孝浩死亡の日である昭和五五年五月四日から支払ずみまで、民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払うことを求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1、2の事実は認める。3のうち(一)(1)中の孝浩の死亡時の年齢の点と(二)の事実は認め、(一)(3)の事実は不知、その余は争う。なお、原告らは孝浩の死亡により同人の将来の養育料の支出を免たことに帰するから、原告らが相続した孝浩の逸失利益の賠償請求額から相当額を控除すべきである。

第三証拠〔略〕

理由

一  交通事故の発生

請求原因1の事実は、当事者間に争いがない。

二  被告の責任

請求原因2の事実は、当事者間に争いがない。

三  原告らの損害

1  孝浩の損害と相続

(一)  逸失利益

孝浩が死亡時八歳の男子であつたことは当事者間に争いがない。同人の労働可能年数は一八歳から六七歳までの四九年間、その収入は昭和五四年賃金センサス中の男子全労働者・産業計・企業規模計・学歴計の表による平均給与額に依拠し、生活費は収入の五割を占めるものとして逸失利益を算出し、現価はライプニツツ式によつて換算するのが相当である。

算式

(20万6,900×12+67万3,800)×(1-0.5)×11.154=1,760万4,358

なお、被告は養育費の控除を主張するが、交通事故により死亡した児童の損害賠償債権を相続した者が一方で児童の養育費の支出を必要としなくなつた場合においても、右養育費と児童の将来得べかりし収入との間には、前者を後者から損益相殺の法理又はその類推適用により控除すべき損失と利得との同質性がなく、従つて、児童の財産上の損害賠償額の算定にあたりその将来得べかりし収入額から養育費を控除すべきものではないと解するのが相当である(最判昭和五三年一〇月二〇日、民集三二巻七号一、五〇〇頁参照)。

(二)  慰藉料

当事者間に争いのない前記請求原因1の事実によれば、本件事故の原因が加害車両運転者である訴外田淵寛一の一方的過失にあることは明らかであるから、このような事故の態様を考慮すると、慰藉料は金一、〇〇〇万円をもつて相当とする。

(二)  相続

原告宮長弘泰本人、原告宮長文子本人の各供述によれば、原告らは孝浩の父母で、孝浩に属する権利をそれぞれ二分の一ずつ相続したと推認できる。

2  損害のてん補

請求原因3(二)の事実は当事者間に争いがなく、各受領額九〇五万二、六四四円ずつを原告らに属する損害賠償請求権の額から差引くべきことは同原告らが自認するところである。

3  弁護士費用

原告らが訴訟代理人に支払うべき弁護士費用のうち各原告につきそれぞれ金四〇万円を本件交通事故による損害として相当と認める。

四  結論

以上によると、被告は原告らそれぞれに対し、各金五一四万九、五三五円と、内金四七四万九、五三五円については不法行為後の昭和五五年五月四日から、内金四〇万円(弁護士費用)については本判決確定の日から各支払ずみまで、民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払義務があるものというべきであるから、原告らの被告に対する請求は右の限度において正当としてこれを各認容し、その余の原告らの請求は失当としてこれをいずれも棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条を、仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 生熊正子)

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